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東京家庭裁判所 昭和41年(家)8417号 審判 1967年1月26日

申立人 白川良一(仮名)

相手方 白川君子(仮名)

主文

相手方が申立人の推定相続人であることを廃除する。

理由

一、当裁判所昭和四一年(家)第七〇八一号準禁治産宣告申立事件記録、家庭裁判所調査官大野輝房の調査報告書並びに申立人および参考人吉岡啓子に対する審問の結果によれば、次の事実が認められる。

1  相手方は、申立人およびその妻白川タマ間の二女で、申立人の推定相続人であり、申立人所有の財産は、別紙目録記載のとおりであること。

2  相手方は、昭和二六年三月中学卒業後製薬会社の包装工として約七年間勤務したが、昭和三四年一一月頃家出し、しばらくバアーに勤めた後売春婦に転落し、昭和三六年六月頃山本照一と知り合い、爾来同人と同棲するに至つた(現在同人は恐喝罪による懲役二年の刑で府中刑務所に服役中)こと。

3  右山本照一は、元土工をしていたものであるが、相手方と同棲後は相手方の売春による収入のみに頼つて徒食し、相手方は売春による収入が不足すると、親戚や近隣の知人から借財し、その額は昭和三五年一月頃から昭和三六年一二月頃までの間に約四万二千円に達し(これらの借財はその都度申立人の妻白川タマにおいて返済している。)、または申立人宅から金員を持ち出し、その額は昭和三六年六月頃から昭和三八年一一月頃までの間に約百七万九千円に達していること。

4  相手方は売春防止法違反で七回検挙され、婦人保護施設に三回入寮したが、その都度無断退所し、その後補導処分により、昭和三九年六月から同年一二月、昭和四〇年四月から同年一〇月までの二回東京婦人補導院に入所し、更に第三回目の補導処分により昭和四一年二月二五日右東京婦人補導院に入所し、同年八月二五日補導処分期間満了により同所を退所したこと。

5  相手方は当裁判所において昭和四一年八月一九日に財産を濫費する習癖があり、その結果、自己および扶養の義務ある者の生活を危からしめるもので浪費者と認定されるとして、準禁治産宣告の審判を受け、同審判は同年九月三日確定したこと。

6  相手方は、更生を誓い、昭和四一年八月二五日東京婦人補導院退所後直ちに婦人保護施設である立川市所在新生寮に入寮したものの、入寮当日外出中逃走し、池袋方面で再び売春婦をしている模様であり、同年一一月七日売春防止法違反で、一旦検挙され、東京地方検察庁に送致されたのであるが、同月八日微罪により起訴猶予処分となつて釈放され、その身柄を引受けた豊島区福祉事務所在勤辰野婦人相談員とともに婦人保護施設に赴く途中、再び相手方は逃走し、以後全くその消息が不明であること。

二、以上認定の事実によれば、相手方は、正業につかず、浪費を重ね、社会の落伍者の地位に転落し、もつともたちの悪い親なかせの部類に属するものというべく、相手方の所為は相続人廃除の原因の一つである著しい非行に該当することは明らかである。

よつて、申立人の本件申立は理由があるので、主文のとおり審判する次第である。

(家事審判官 沼辺愛一)

(別紙省略)

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